2022.10.28
文学賞から始まるAI創作の世界
(AIのべりすと開発者:Sta)
「トリポッド」というSF小説があります。間抜けで知能の低い生き物のふりをした異星人を小ばかにしているうちに、気がつけば地球はまるまる侵略されてしまう。
西洋の人々は常にマンメイドの知能にあこがれながらも、「生態系の頂点にある自分たち人間を超えるものを作りたい」が「自分たちが超えられて支配されるかもしれない」という矛盾した欲求と恐怖を抱いてきました。
AIは本当に異星人のような、到底理解しようのないものなのでしょうか?
無機物や架空のものに人格を与えて可愛がったり、本気で入れ込んだりするのは私たち日本人や、東洋人に特有といいます。 今や日本は半導体やAIの覇権争いからは蚊帳の外かもしれないけど、逆にいえば私たちにしかできないパーソナルなAIの世界を構築できるはずではないでしょうか。AIのべりすとは、まさにそこを最初から目指してきました。
今回のAIのべりすと文学賞は、始まりに過ぎません。
「AIに仕事を取られるかも」とか「AIに負けるかも」という恐怖ではなく、「AIを活用して大作家になった」とか「AIのおかげで創作が苦でなくなった」という実際の成功体験がこれから次々に出てくるはずです。
その最初の触媒のひとつがAIのべりすと文学賞なのだと思います。
受賞者の皆様、おめでとうございます。
これからもAIのべりすとを使ったクリエイティブな作品との出会いを楽しみにしています。
第1回「AIのべりすと文学賞」
審査委員長・橘川幸夫のご挨拶
第1回「AIのべりすと文学賞」は、AIと人間の想像力が融合して作られた物語の、日本ではじめての文学賞にも関わらず、389本もの作品が寄せられました。本当にありがとうございました。
厳正な審査の結果、大賞には高島雄哉氏の「798ゴーストオークション」が選ばれました。作家としての基本的な技術や構成力を持っている作家が、AI技術による文書生成システムを見事に使いこなした作品だと思います。これからの時代の新しい文学の可能性の扉を開けたと思います。
私見を言わせてもらえれば、インターネットが登場したことによって、私たちの生活意識や生活方法が大きく変わりました。物書きである作家やジャーナリストも、これまでは現場を訪問したり、関係者を取材したり、図書館で資料を閲覧したりして知識を重ねて、文章で表現をしていました。しかし、現在は、インターネットを抜きにした取材活動はありえないと思います。用語の確認や事実関係の確認のために、検索をしない人はいないと思います。
もちろん、インターネットに頼り切った物書きは薄っぺらいものになってしまいますが、ネットとリアルをうまく組み合わせた人たちが、これからの物書きだと思っています。
「AIのべりすと」は、インターネット環境の膨大な語彙のデータベースを処理して、一人ひとりの個性的な個人のクリエイティブ行為を支援します。開発者のSta氏は、「AIのべりすと」は「神」でも「奴隷」でもなく、「ティンカーベル」(妖精)であると評しています。まだ開発は、はじまったばかりですが、今後、更にインターネット情報の拡大とともに、作家にとっての愛すべき妖精として成長していくと思います。
また、2022年は、AI技術を使った絵の創作や、音楽の創作技術が急激に進歩しました。それらを称して「AIクリエイティブの時代」が始まったといえるのではないでしょうか。そして、新しい時代に即した、新しい表現者が登場するのでしょう。
第1回の「AIのべりすと文学賞」の各賞を受賞された皆様、おめでとうございます。惜しくも選に漏れた応募者の皆様に、深く感謝いたします。皆様のエネルギーをいただき、第2回の「AIのべりすと文学賞」を推進していこうと思います。ぜひ、進化している「AIのべりすと」を、引き続きご利用いただき、次回も力作の応募をお願いいたします。
そして、はじめての文学賞の審査をお引き受けいただいた審査員の皆様に、あらためて感謝いたします。実験的な作品が多く、ご多忙に皆様には、貴重な時間をいただきました。今後も、「AIのべりすと」の可能性を見守っていただけると幸いです。
人間と情報システムの新しい関係によって、私たちの新しい世界が開いていきます。今後とも、よろしくお願いいたします。