2007年10月15日
nComputing(代理店:ファイアサイド)のシンクライアントに注目シンクライアントというのは「ユーザーが使うクライアント端末に必要最小限の処理をさせ、ほとんどの処理をサーバー側に集中させたシステムアーキテクチャ」(Wikipedia)だ。
このうち、クライアント側では画面の描画とユーザー入力の処理をするだけで一切の処理をサーバ側で行うアーキテクチャをウルトラシンクライアントと呼ぶことがある。
PCによるLANに比べて、OS、アプリケーションのアップデートを含めてシステムメンテナンス一切をサーバ側だけで実行できるので、管理のコストがきわめて少なくてすむ。当然セキュリティー的にもメリットが多い。
現在代表的なウルトラシンクライアント製品はSUMマイコロシステムズのSUN Rayだが、こちらはクライアントのハードウェアが単体で6万円と低価格PCなみの値段で、サーバにはSPARCステーションが必要と、かなり敷居が高い。
ここでカリフォルニアのスタートアップ、nComputingのウルトラシンクライアントが注目を集めている。クラスタタイプのXシリーズは、1枚のPCIカードに3台のXクライアントが接続でき、1台のサーバPCに2枚のPCIカードが装着できる。つまり1台のPCを最大7席でシェアできる。このPCはWindows XP Proが動けばなんでもよい。
またLANタイプのモデルLシリーズも用意されており、こちらは1台のPCに最大30台まで接続できる。これもホストは普通のWindows PCでよい。(図参照)
Xクライアントはすでに50万台の販売実績をあげている。マケドニア政府が学校用に18万台を大量購入したのがシリコンバレーで大いに話題になった。
マケドニアのような貧乏国で導入できたのは、なんといってもコストパフォーマンスだ。ディスクレスなのはもちろんだが、CPUもないので消費電力が少ない。サーバからの供給で電源をまかなえるので、独立の電源も必要ない。
日本ではファイアサイドマーケティングからPCIカード1枚にXクライアント3台のセットで34,800円で提供されている。単純計算で1席あたり1万1600円とたいへん経済的だ。(これに別途モニタ、キーボード、マウスが必要になる。)
創立まもないスタートアップによくそれだけの大量生産ができたものと思ってちょっと調べてみると、nComputingの創立チームはエントリーモデルのPCメーカー、eMachines(現Gateway傘下)の創立メンバーということで、なるほどハードウェアの生産には十分な経験があるわけだ。(筆者が今この記事を書いているデスクトップ機がたまたまeMachines)。
しかしウルトラシンクライアントのメリットは導入価格そのものもさることながら、むしろその後のメンテナンスのコストが低いことにあると思う。PCをLANでつないだ場合はすべてのマシンでOSと各種アプリケーションのアップデートや修復、ウィルスチェックなどのメンテナンスを行なわねばならない。
仮に1台に毎週30分かかるとすると30台では1月に60時間となり、各種の省力化ツールを利用するにしても、なかなか片手間で対応できる仕事量ではない。Xシリーズを利用した場合は単純に作業量が最高7分の1に減る。30席を管理する手間が月10時間以下となるわけだ。またクライアント側にハードディスクはもちろんOSイメージさえ置かれないのでセキュリティー管理もはるかに容易になる。
マケドニアの例を見るまでもなく、学校を始め、カルチャー教室、塾、企業の研修など教室的な場所に好適なソルーションだが、それに止まらず、小企業、ホームオフィス、自治体や病院の待合室など、さまざまな場所で使われてよさそうに思う。
ただ、シンクライアントというコンセプトがまだ先端的な企業を除いてまだ一般に浸透していないのがネックだ。ニワトリとタマゴの話になるが、日本でもどこか目立つ場所で大量採用されると一気に広がるのではないだろうか。
ファイアサイドマーケティング株式会社
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