デジタルメディア研究所研究員・東大法学部卒業後、都庁勤務などを経てIT関係のライター、翻訳者。著書に「データベース・電子図書館の検索・活用法」(東洋経済新報社・下中直人、市川昌弘と共著)、「 ソーシャル・ウェブ入門入門 Google, mixi, ブログ…新しいWeb世界の歩き方」(技術評論社)など。個人のブログはSocial Web Rambling

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2007年08月26日

Second Life は必ず来る (2)

Travellers TalesブログにSecond Lifeに関するWeb上の情報を丹念に拾ったエントリーがアップされている。最近の注目記事はだいたい網羅されている。滑川も参加した「セカンドライフ創世記」(インプレス)も左上隅に映っている―残念ながら記事中では紹介されていないがw

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Second Life(に限らず3Dウェブ)の本質は「他者」のプレゼンスにある。単に縦横奥行という物理的三次元性が擬似的に表現されているというだけではない。<自分―他のユーザー―対象コンテンツ>という三次元性が実現されているところが本質。ただしこの本質を十分に生かしたコンテンツ(あるいはアプリケーション)の登場は将来の課題だ。

2DのウェブにしてもMOSAICが開発されてからYahooの登場、さらにGoogleというキラーシステムによって社会システムとしてブレークするまで10年以上かかっている―3Dウェブの場合、さすがにあと10年はかからないはず。ただし3年なのか、5年なのか予測するのは難しい。Googleと携帯市場という2つの怪物の動向も重要だ。

2007年08月24日

mixi「祭り」で「nifty投票」のエンベッド

珍しいことでもないが、またmixiで不適切な行為を自慢した大学生が祭られている。恒例の「まとめサイト」も設置されているのだが、最近は「まとめサイト」にもよくできたテンプレがあって、それに沿って製作すれば誰にでも状況がよくわかるサイトが作れるようだ。しかも問題の学生が自慢した不適切行為のなかで「どれが最悪だと思うか?」というアンケート(nifty 投票)が設置されていて、エンベッドコードが配布されている。こういう使い方もあったか。ソーシャル化の進展にはこういったある意味、ダークサイドもついてくる。

「ヒトデはクモよりなぜ強い」(日経BP近刊)

本書「ヒトデはクモよりなぜ強い」は「21世紀はリーダーなき組織が勝つ」というサブタイトルのとおり、頭を潰されたら死んでしまう伝統的「クモ型組織」に対して、バラバラに切断されても強靭に再生する「ヒトデ」型組織の強さが強調されている。

アメリカのノンフィクション例に漏れず、ツカミがおもしろい。大航海時代にスペインはピサロ以下少数の冒険家でインカ帝国とマヤ帝国を滅ぼし、メキシコ中部以南の新大陸を制覇した。ところがメキシコ北部でアパッチ族に敗れ、アメリカのスペイン領有はそこでひとまず停止してしまう。なるほど、もしこここでアパッチ族の抵抗がなければミシシッピ川西岸までスペイン領となっていたかもしれず、そうなっていたら歴史は大きく変わっていただろう。

本書の冒頭では、アパッチ族の抵抗が「非集権的ヒトデ型組織」の強さの典型として取上げられて、既存のレコードレーベルがP2Pによる音楽ファイル共有に手を焼くありさまがスペイン軍対アパッチの戦いに対比されている。

著者によれば、「スカイプvs既存電話会社」、「(サーバーソフトの)アパッチvsマイクロソフト」、「アルカイダvsアメリカ」がそれぞれ「ヒトデvsクモ」でヒトデの方が強い例とされる。

しかしクモは複雑な網を作って捕食したりするかなり高等な動物であるのに、ヒトデには組織の分化もほとんどなく、原始的な反射以外に知能らしきものもない。P2Pネットワークのような高度なテクノロジーと比べるのはどうかとツッコミが入りそうだ。しかしイメージ喚起力のある比喩には違いない。

ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ(日経BP)ほど執拗・重厚なデータの羅列がなく、文章は軽快で読みやすい。その「ウィキノミクス」(日経BP)、佐々木俊尚氏の力作フラット革命(講談社)とあわせて読むと現代のマスコラボレーション化、フラット化、ソーシャル化が立体的につかめるだろう。

ヒトデはクモよりなぜ強い
21世紀はリーダーなき組織が勝つ
オリ・ブラフマン/ロッド・ベックストローム 共著 糸井恵 訳 日経BP 1800円

9月3日近刊

2007年08月23日

Animotoはなかなかすぐれもののスライドショー自動作成サービス

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スライドショーの作成サービスはいろいろあるが、Animotoは「自動作成」がセールスポイント。使い方はたいへん簡単。インタフェースも上のようにシンプルなもので、まず必要な画像を一度にアップロードする。画面上で順序指定、回転指定、強調指定を行なう。最後にBGM音楽(ライブラリーから選択するか、自分でアップロード)を指定してレンダリングする。しばらく待っていると、下記のようなスライドショーが自動的に作成される。もちろんエンベッドコードが作成できるのでコピペして利用する。(こないだシリコンバレーに出張したときの写真でスライドショーを作ってみた。)

なるほど、自動作成とは思えないほどよくできている。素人があれこれ頭をひねるよりずっとましかもしれない。

上記は無料の30秒バージョン。これより長いスライドを作りたい場合は有料になる。1本3ドルまたは年会費30ドルで本数無制限。スタートアップ企業のことで将来がどうなるかわからないのでまだ企業ユースにはちょっと2の足だが、ブログツールとしてはなかなかスグレものだ。

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2007年08月22日

3Dバーチャルワールドは必ず来る

Second Lifeバブルのバッシングがだんだん勢いづいてきた。もちろんSecond Lifeをタネに土地建物を転がして短期的にひともうけを考えていた向きには逆風だ。しかしSeocnd Lifeの周辺で起きたバブルとLinden Labの経営はく別のもの。Linden LabにとってPR目的で進出してきた企業からのサーバ維持費の収入がすべてなくなってもさして大きな打撃にはならない。さらに言えば、Linden Labの経営がどうなろうと3Dウェブの時代は近い将来必ず来る。

ハードウェアの敷居が高いというがVistaが動くレベルのパソコンならSecond Lifeは普通に動く。いずれにせよパソコンのハードの進歩がいきなり止まるはずはない。時間が解決する典型的な例だ。

1サーバあたりのクライアント(ユーザー)の収容能力が低いという問題も別に決定的な障害ではない。

1サーバに50人しか入れないからダメだというのは、「この部屋は50人しか入れないから使い道がない」と言っているのと同じ。その他の批判もつまるところ、パソコンやウェブが登場したときの「こんなものは使えない」論の蒸し返しに過ぎない。

自動車が登場したときも鉄道と比較して「こんなものはオモチャだ、なぜなら」という議論が長く続いたし、それを言うなら鉄道が登場したときには馬車と比べて「こんなオモチャは」とやっていた老人がいたに違いない。

(つづく)

Google地図がサイトに貼りこみできるようになった

Google地図がリンクでなく、直接ブログやウェブサイト中に表示できるようになった。「マイマップ」タブを開いて必要な地点を表示し、目印を追加するなどしてから、右上の「このページのリンク」を開く。

すると「HTMLを貼り付けてサイトに地図を埋め込みます」という新しいオプションが表示されている。クリックしてハイライトさせ、サイトにコピペするだけ。簡単だ。試しにデジタルメディア研究所の住所を表示させてみた。「カスタマイズとプレビュー」リンクを開くと貼りこみのサイズも自由に指定できる。


拡大地図を表示

2007年08月19日

Web2.0の笑える定義

最近ネットにWeb2.0の笑える定義がアップされた。

Q:Web2.0を最大2個の文で定義せよ。
A:われわれがコンテンツを全部作る。彼らが収入を全部持っていく。

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流行語としての「Web2.0」は去年いっぱいがピークだったようだが、今年に入ってからの最大のバズワード、「ウィキノミクス」は、なんのことはない「Web2.0のビジネスモデル」そのもの。したがって上の定義がちょうどぴったり当てはまる。

しかし、いくら彼らがいちばんおいしいところを持っていこうと、われわれ一般ユーザーはAmazonやGoogleを使わずすにすますわけにはいかない。使っても金にはならないが、使わねば絶対に損をするという「悪魔の選択」がウィキノミクス=Web2.0経済の実態だ。

これから少し「夏休み最後の宿題」としてそこらへんを考えてみたい。

2007年08月17日

Amazon Fresh、生鮮食品の宅配ベータテスト中

Amazonは生鮮食品の宅配サービスAmazon Freshの実験をシアトル地区で始めた。下のような画面からログインして注文する。配達は「明け方ドアの前におく」、「時間指定」、「近所の店に預ける」の3種類とキメ細かい。

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こういうトラックがシアトル市内で最近目撃されるようになってきた。

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そしてこういう紙バッグに入って届く。明け方配達は日本では「ドアの前に置いておく」というのが、食品だけにちょっと抵抗があるかもしれない。しかしAmazonで食品まで買えるとなったら、買ってしまいそうだ。ユーザーレビューはあるのだろうか? 日本でもこれは有望だろう。

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2007年08月14日

橘川幸夫、「ほぼ日」ダーリンに登場

橘川幸夫と糸井重里さんが先週の金曜日に懇談した話を書いたが、日曜日の「ほぼ日」巻頭コラム「今日のダーリン」に橘川が登場していた。

酔っ払いがクダ巻いて「おれに言わせりゃ」というが、面白い「おれに言わせりゃ」はエンタタテインメントだ、タモリもみうらじゅんも自分(糸井)も「おれに言わせりゃ」系のエンタテイナーかもしれないという話の流れの最後に「初めて橘川幸夫さんにお会いしましたが、この人は『おれに言わせりゃの宝物殿』でしたね」とある。橘川には言い分もあるかもしれないがw、いやはやwww。この部分、何度読み返しても笑いがこみあげてくる。やはり橘川はタモリ、糸井クラスの「おれに言わせりゃ」の巨匠レベルだったか。

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2007年08月11日

橘川幸夫、糸井さんと懇談

8月10日、午後、橘川幸夫が東京糸井事務所を訪問、糸井重里さんと数時間にわたって懇談した。写真は糸井事務所の会議室で糸井さんの登場を待っているところ。糸井さんがお見えになってからは話に夢中で写真を撮るのを完璧に忘れた。新米ブロガーはこういうことをやってしまうので困る。反省。

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横じまポロシャツの橘川の左が電通の田中さん、スーツの背中が日経BPの藤田さん、ユニークな髪型がGAOの照井くん。橘川の親しくしている皆さんで世紀のイベントwをリングサイドで見学しようとお見えになった。藤田さん、田中さんとは初対面。(今後ともよろしくお願いします。)照井くんは滑川も旧知。15年くら前に六本木の路上ですれちがって以来の再会。

糸井さん、日経BPの山中さんと鼎談

実は糸井さんが「ソーシャル・ウェブ入門」を読んで面白がってくださり、7月に糸井さん、日経BPの山中さんと鼎談をさせていただいた。(内容は「ほぼ日」と「日経NBOnline」で8月末に掲載の予定らしい。楽しみ)。その後の雑談でなぜか橘川幸夫の話で盛り上がり、糸井さんが「これだけよく名前聞く人も珍しいけど、まだ会ったことないな〜」と言われた。そのあたりがきっかけで、今回の顔合わせとなったもの。

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2007年08月09日

日米ビデオブログ…対決にはならないが

美人キャスターによるテクノロジー系ビデオブログというジャンルのパイオニアはアマンダ・コンドン Amanda CongdonのRocketboomというビデオブログだ。アマンダと創立者がギャラの配分をめぐってケンカ別れしてRocketboomは往時の勢いを失っている。アマンダは大金でスカウトされてテクノロジーに限らず幅広いジャンルのビデオブログをABCテレビのサイトに掲載している。

アマンダはビデオブロガーというより、書かれた原稿を読むトークショーホストだったので、ケンカ別れの後、ABCでは一般分野の報道に転じたわけだが、最近、IT関係の知識がある女性ジャーナリストによるブログがまた注目を集めている。

なかでもオススメはモーガン・ウェブ Morgan Webbのウェブアラート WebbAlertとナタリー・デルコンテ Natalie Del Conteのテクストラ TeXtraの両ブログ。モーガンはブロンドのワスプ、ナタリーはブルネットのヒスパニックだが、いずれ劣らぬ美人。

二人ともアマンダと違って人の書いた原稿を読むわけではない、ナタリーは短期間だがTechCrunchのライターをつとめていたこもあり、現在もZDNetはじめあちこちに記事を書いている若手の優秀なITジャーナリストだ。モーガンもビデオブログのテーマの選定から台本の執筆、カメラの操作まで全部ひとりでこなすというマルチタレント。

いっぽう、わが国では「みたいもん!」のいしたにまさき氏らがくわわってトーキョードリフトというビデオブログが出発した。こちらはユルイところがウリの「なんでもあり東京案内」のブログなので、もちろん直接比べるようなジャンルではないのだが、とりあえず画質、音質にだいぶ改善の余地がある。スポンジカバーつきの指向性外部マイクを使うとか、さほど金をかけないでもいろいろ工夫はできるので、今後に期待したい。

下にエンベッドしたのがモーガン・ウェブのWebalert

2007年08月06日

書評 「インターネットは誰のものか」  ★★★★★

著者は総務省の現役課長。ブロードバンド競争政策を担当してきたほか、ワシントンの日本大使館で情報通信政策のアタッシェを務めている。Nikkeiのネット時評にもたびたび寄稿するなど「発言する官僚」として知られている。

一言で要約すればこの本は「インターネットの中立性問題」の一般向け解説である。あまり注目を引くネーミングではないうえ、説明が面倒なので、この問題は業界外ではほとんど知られていない。「いや、これは利用者の誰にも関係する話ですよ。知らないではすまされない大問題ですよ」ということを分かりやすく解説している。

実はこの「ネット中立性問題」、「ソーシャル・ウェブ入門」を書いているとき、解説を試みたことがあるのだが、あっという間に挫折してしまった。なにしろ、インターネットという巨大システムの技術面とビジネス面を一般向けに説明するというのはいへんな力ワザが必要になる。

一般的ユーザーのインターネットに対する認識といえば、「(Yahooの)孫さんがやってるんじゃないの?」という程度だろうというジョークがある。実際われわれが日常接するインターネットは契約しているISP(プロバイダ)までで、その向こうはブラックボックスというか「雲」のままになっていても利用にはまったくさしつかえない。ところが近い将来インターネットの仕組みは大きな曲がり角を向かえようとしいる。この問題を理解するためには、プロバイダの先のネットがどういう仕組で運営されているのか、どうしても一定のの知識が必要になる。

本書では、問題点を理解するための前提つとして「小さいサーバが大きなサーバに接続するときには、小さいサーバは大きいサーバに接続料金(トランジット料)を支払わねばならない」といったビジネス的な仕組みから、「ISPや通信キャリヤ自身も正確な負担割合を決められるようなトラフィックデータをもっていない」といった実態まで、インターネットをビジネス・システムとして理解するために必須の知識が幅広くわかりやすく紹介されている。

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2007年08月05日

飯島愛、ひろゆき面接動画を公開

飯島愛が自分のブログで面接動画を公開している。飯島は黒のリクルートスーツでいたってマジメないでたち。ひろゆきがやたらペコペコお辞儀していて、どっちがどっちを面接してるのかわからない。

>6月に撮影されたものですよ。
とのこと。

正味1分もないくらいだが、巨頭の2ショット動画が公開されたことだけでも業界には衝撃波かw

前後の事情は、J-CASTニュースによると、飯島愛、「ニワンゴ」でバイト? ひろゆき、面接日指定

ザ・コン館閉店へ

秋葉原のザ・コンピュータ館がついに閉店だそうだ。ラオックス「ザ・コン」が閉館へ - 17年半の歴史に幕 そうか、17年になるのか。

秋葉原に行くとザ・コンの上の書籍売り場をのぞくことにしていたのでちょっと不便になる。コンピュータ書専門の売り場としては日本最大のもののひとつだろう。なにより空いていてのんびりできるのがよかったのだが、考えてみると客より店員のほうが多いような状態では儲かるまい。IBMのホームページビルダー10を衝動買いしたのを除けば、ザ・コンでは本しか買ったことがない。

そういえばソフトバンクのネットランナーも「休刊」だ。ザ・コンが「パソコン」時代を象徴するランドマークなら「ねとらん」はWinnyとWeb1.0を象徴する雑誌だったかもしれない。

一昔前、大型店では、パソコン雑誌のコーナーは、幅が5mかそれ以上あったものだが、今では1m以下に激減だ。IT関連の分野では一次情報がまず100%ネットに上がる。Googleで検索からRSS購読まで興味ある情報をいちはやく入手する手段にもことかかない。編集され、印刷され、取次ぎを通され、本屋の店頭に並ぶの待って、金を払って買う、という必要を誰も認めなくなったのは当然だ。

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2007年08月01日

ひさびさにシリコンバレー訪問

デメ研にお邪魔してブログを書かせていただくことになりました。よろしく。


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先週はひさびさにサンフランシスコからシリコンバレーあたりを走り回ってきた。左の写真はあのリンデンラボの玄関のプラックだ。場所はエンバーカデロとフィッシャーマンズ・ウォーフの中間、海岸から一二本奥に入った殺風景な裏通り。あたりにはさびれたカフェやら暗い中庭にボロトラックが出入るするなんかの会社やらが並んでいる。

リンデンラボの名前の由来は最初にオフィスを構えたのがリンデン・ストリートだったから、というあっけないものだが、たしかリンデンストリートのあるのもこんな感じの地区だったような。これだけ騒がれる存在になってもシリコンバレーのガラスと新建材のオフィスに入らないのはフィリップ・ローズデールの趣味というか信念だ。

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